『訓民正音』とは「民に教える正しい音」という意味である。朝鮮第4代王である世宗はそれまで使われていた漢字が韓国語と構造が異なる中国語表記のための文字体系であるために、多くの民が学び、使うことができないという事実をもどかしく思い、世宗25年(1443)に韓国語の表記に相応しい文字体系を完成させ 「訓民正音」と名付けた。
世宗28年(1446)、鄭麟趾などが世宗の命を受け説明した漢文解説書を全巻33頁1冊の本として発刊し、その題名を訓民正音とした。解説が付いており『訓民正音解例本』または『訓民正音原本』ともいう。現存本は1940年頃、慶尚北道安東の古い建物から発見され、国内唯一の貴重な本である。
世宗は新たに作った文字について創製の目的を明らかにした序文と新しい文字一つ一つに対して概括的に例示し説明した文を作り、集賢殿の学者達にこれに対する詳細な解説と用例を作るよう命じ、本を作ってこれを民に広く公開した。
この本には世宗の作った序文と訓民正音の音価及び運用法を明示した礼儀編が制字解、初声解、中声解、終声解、合字解、用字例の順に記されている。この本の出版日を記念してハングルの日と制定したことやユネスコで非識字者退治に貢献した人々に世宗大王賞を授与するということはこの本の文化史的意義を示している。
『訓民正音』は全体の分量が本文4頁、注釈と鄭麟趾の序文29頁からなる33頁に過ぎないが、理論全体が秩序正しく、敍述が科学的な内容の本である。文字を作った原理と文字使用に対する説明にみられる理論は現代の世界言語学者たちに高く評価されている。
世界の多くの諸民族が自らの言語を表記する文字を作ろうとしたが、ハングルのように一定の時期に特定の人物が、直接、既に存在している文字の影響を受けず独創的な新しい文字を作り、一国家の公用文字として使用するようになる例は、世界的に他にない。さらに新しい文字に関する解説を本で出版したものも歴史的に類例がない。特にこの本で文字を作った原理と文字使用に関する説明にみられる理論が厳密で秩序正しいことから世界の多くの言語学者が非常に高く評価している。
宗廟祭礼は最高の品格をもち儒教の手続きに従って執り行われる王室儀礼で、これを通じて東洋の基本理念である「孝」を国家的な規模で実践することにより民族共同体の紐帯を強化し、秩序を形成する役割を持っている。これと共に宗廟という造形的な建築空間で行われる宗廟祭礼の荘厳で洗練された美しさは、自然と一体となり東洋的総合芸術の真髄であり、500年という時間と空間を超越した韓国の大切な精神的文化遺産である。
宗廟祭礼は解放以後、しばらくの間廃止されたこともあったが、1969年から全州李氏大同宗約院が中心となり、毎年5月の最初の日曜日に執り行っている。